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更新日 2026.09.27
投稿日 2026.08.19

「採用、なんとかしなければとは思ってるんですが……」
経営者や事業責任者からこういう声をよく聞きます。媒体費を増やしても応募の質が上がらない、エージェントへの依存がやめられない、採用コストだけが右肩上がりになっている——そんな状態、思い当たりませんか?
その根本に、採用ブランドの不在があることは少なくありません。選ばれる会社は、媒体を増やす前に「この会社に入りたい」という磁力を持っています。そしてその磁力は、人事部門ではなく経営者が起点になって生まれるものです。
この記事では、採用ブランディングの定義と採用マーケティングとの役割分担を整理した上で、社長・代表が実際に何をすべきかを具体的に解説します。
採用ブランディングとは何か——「知ってもらう」ではなく「選ばれる状態をつくる」

採用ブランディングとは、求職者が「この会社で働きたい」と感じる状態を、意図的に設計することです。
もう少し丁寧に言うと、自社が何者であるか、何を大切にして働いているか、そこで働くことにどんな意味があるかを採用の文脈で一貫して発信し続けること——その積み上げが採用ブランドです。
よくある誤解は「採用サイトを整えることが採用ブランディングだ」というものでしょう。サイトはチャネルであって、ブランドそのものではありません。チャネルより前に「何を伝えるか」の設計が必要で、そこが抜けたまま採用サイトをリニューアルしても、見た目は変わっても求職者の反応は変わらない。
採用ブランドが機能している状態とは、求職者が求人票を見る前から「あそこはいい会社だ」「あそこで働きたい」という認識をすでに持っている状態です。その認識は媒体費ではなく、日頃の情報発信と働く環境の実態から積み上がります。
採用広報・採用マーケティングとは何が違うのか

採用ブランディングに隣接する概念として「採用広報」と「採用マーケティング」があります。それぞれ役割が異なるため、混同すると施策の優先順位が狂います。
採用広報は、社内の実態やカルチャーを外に向けて発信する活動です。社員インタビュー、オフィスツアー動画、Wantedlyの記事——これらは全て採用広報。「見せる」活動と言い換えてもいいでしょう。
採用マーケティングは、求職者に認知・興味・応募というプロセスを設計し、数字で管理する活動です。どの媒体に出稿するか、スカウトメールの開封率をどう上げるか——こうした施策の最適化がメインです。
そして採用ブランディングは、この両方の土台になるもの。「自社が何者か」が定義されていなければ、広報も正しい情報を発信できないし、マーケティングも「何を訴求するか」が定まりません。順番で言えば、ブランディングが先です。
ブランディングとマーケティング——採用における役割分担を整理する
ブランディングとマーケティングは「どちらが大事か」を競うものではありません。それぞれが異なる役割を持ち、両輪として機能するものです。
採用において整理するとこうなります。ブランディングは「選ばれる理由をつくる」もの。自社の価値観やカルチャー、働く意味を定義し、求職者の頭の中に一貫したイメージを積み上げていく。これは短期的には数字に出にくいが、長期的に採用の質と効率を根本から変えます。マーケティングは「選ばれる機会を増やす」もの。ブランドへの認知と共感が生まれた人に、適切なタイミングで応募のきっかけを届ける。
この関係性が崩れるのは、「マーケティングだけ」でどうにかしようとするときです。媒体を増やし、スカウトを大量送信し、条件を上げて競争する——このサイクルを続けると採用コストは上がり続けます。
なぜいま採用ブランディングが必要なのか——売り手市場と「情報化する求職者」

採用ブランディングの必要性が高まっている背景は、大きく二つあります。「売り手市場の継続」と「求職者の情報収集行動の変化」です。
求職者は入社前から、会社の中身を読んでいる
かつての求職者は、採用担当者から情報をもらうことで会社を知っていました。今は違います。企業名を検索し、SNSで社員のアカウントを確認し、口コミサイトで評判を調べ、YouTubeで社員インタビューを見てから面接に来る。
つまり求職者は、企業が「出したい情報」だけでなく、社員の発言や口コミ、SNSの空気感まで含めて総合的に評価しているのです。
この変化が意味するのは、採用ブランドを「オフィシャルな場だけ」で設計していても機能しなくなったということ。実態と発信にズレがある会社は、入社後に「思っていたのと違う」という離職を生みやすくなります。逆に言えば、会社の実態をそのまま正直に発信できる会社は強い。「こういう人には合わない会社です」とまで言い切れる自己開示の強度が、カルチャーフィットした採用につながります。
採用コストが下がらない会社に共通する「ある構造」
マイナビの調査によると、2024年の中途採用における1人あたりの平均採用コストは134.6万円で、前年比でも増加傾向にあります(※1)。売り手市場が続くなか、媒体に依存したまま採用しようとすれば、コストは上がり続けるでしょう。
採用コストが高い会社の多くは、「媒体に出稿すれば人が来る」という前提で動いています。しかしそれは、採用ブランドが弱い会社ほど機能しない方法です。求職者に「選ばれる理由」がなければ、媒体の露出量を増やしても応募の質は上がらないからです。
採用コストの問題は、採用ブランドの問題と表裏一体。この構造的な課題の詳細と打ち手については、「採用コストが下がらない本当の理由」の記事で詳しく解説しています。
【内部リンク:採用コスト削減記事】
採用サイトを見て「この会社で働きたい」と思う求職者は少ない。「この会社で働きたいから採用サイトを見に来る」——これが正しい順序です。
採用ブランディングの核心——「何者か」を定義することから始まる

採用ブランディングを始めようとして最初に躓くのが「何から手をつければいいかわからない」という問いです。結論を先に言えば、起点は一つ。「自社は誰にとって、どんな意味がある場所か」を言語化することです。
EVP(従業員価値提案)という考え方

採用ブランディングの世界で使われる概念に「EVP(Employee Value Proposition)」があります。直訳すると「従業員への価値提案」で、「自社で働くことで得られる独自の価値」の定義です。
給与・待遇・福利厚生といった条件面だけでなく、仕事の意義、成長機会、カルチャー、チームの雰囲気、会社のビジョン——これらを含めて「うちで働くとこういうことがある」と明示したものがEVPです。
EVPが重要な理由は、求職者の意思決定が「条件の比較」から「価値観の共鳴」にシフトしているからです。特に若い世代ほど、給与が多少低くても「ここで働く意味」を感じられる会社を選ぶ傾向があります。
EVPを言語化していない会社が求人票に書けるのは、給与・勤務地・仕事内容だけ。それでは他社との差がつかず、条件の引き上げ競争に巻き込まれてしまいます。求職者にとっての「スペック表」にしかならない会社と、「何者か」が伝わる会社では、同じ媒体に出稿しても集まる人が違います。
Airbnbとメルカリが示した「ブランドと採用の一貫性」
Airbnbは「Belong Anywhere(どこにいても帰れる場所がある)」というコンセプトを、事業だけでなく採用にも徹底して貫いた会社です。採用ページには「世界中の誰もが、どこにでも属せる」という信念が語られ、カルチャーへの共鳴が応募の起点になるよう設計されています。
Airbnbで注目されるのは、スキルや経験だけでなく「Belong Anywhereの価値観に共鳴できるか」を採用基準の中心に置いている点。事業コンセプトと採用基準が同じ言葉で語られている——これが採用ブランドとビジネスブランドの一貫性です(※2)。
国内ではメルカリが、自社のカルチャーを「Culture Doc(カルチャーデック)」として社外に公開したことで知られています。「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全員全力)」「Be a Pro(プロであれ)」という3つのバリューを採用希望者が事前に参照できる形で開示。応募者自身がフィルターをかけてくれるため、選考の質が上がり、入社後のミスマッチが減る。採用ブランディングが採用効率にも直結する典型例ではないでしょうか(※3)。
ブランドと採用が同じ言語で語られている会社は強い。「会社のコンセプト」と「採用の言葉」が別物になっている会社が多すぎます。
社長・代表がやるべきこと——採用ブランディングは人事に丸投げできない

採用ブランディングを「採用担当者の仕事」と捉えている経営者は多い。しかしそれは誤りです。採用ブランドの核にあるのは「会社が何のために存在するか」という問いへの答えであり、これは経営者にしか定義できません。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の言語化は、経営者にしかできない
採用ブランドの設計は、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の言語化から始まります。ミッションは「自社は何のために存在するか」、ビジョンは「どんな未来を目指しているか」、バリューは「何を大切にして働くか」——この三つが言語化されていない会社は、採用でも「何を伝えたいかわからないまま」情報を発信し続けることになります。
MVVを言語化する際に注意すべきことが一つあります。「他の会社でも言えること」を書かないことです。「お客様の満足を第一に」「誠実に向き合う」——これらは美しいですが、どの会社にも当てはまります。求職者の心には刺さらない。
自社固有の価値観は、「なぜ創業したか」「何を許せないと思っているか」「どういう人と働きたいか」という、経営者自身の哲学から来るものです。だから人事が書いたMVVは、往々にして「どこかで見たような言葉」になります。
Zapposの事例:CEOが採用基準を設計し、文化を守り続けた理由
アメリカのオンラインシューズ企業Zapposは、創業者のトニー・シェイが「カルチャーフィット」を採用の最重要基準に据えたことで広く知られています。
Zapposでは採用プロセスに「カルチャーインタビュー」を設け、スキルや経歴とは別に「Zapposのバリューに合うか」を専門に評価するステップを設けていました。このプロセスをトニー・シェイ自身が設計し、経営層がコミットしていた点が重要です。
さらにZapposは新入社員に「入社から数週間以内に退職すれば2,000ドルを支払う」というオファーを出していたことでも有名です。カルチャーに合わない人を留まらせないための設計であり、長期的には採用の質と定着率の向上につながりました。「カルチャーを守るのは採用の責任」と言い切ったのは経営者です(※4)。
採用の現場に経営者が出ていくことの意味

採用ブランディングにおいて、経営者が「採用の現場に出ていく」ことは意外に強力な施策です。
SNSで採用への想いを発信する、採用説明会に代表が登壇する、候補者との面接に経営者が出る——これらは「この会社は経営者が採用を本気で考えている」というシグナルを伝えます。求職者にとって、代表の考えが直接見える会社は信頼感が高い。特にスタートアップや中小企業においては、代表のキャラクターや考え方が採用の大きな引力になりやすいのではないでしょうか。
代表がSNSで発信する際のポイントは、経営情報だけでなく「どういう人と働きたいか」「自分が大切にしている価値観」を語ること。求職者が読んでいる前提で書く——それだけで採用広報になります。
社長のSNSが採用のいちばんコストの低いチャネルになる可能性がある。投稿一本が、数十万円の媒体費の成果を超えることがある。
採用ブランディングの進め方——フェーズ別の打ち手

採用ブランディングは「一度やって終わり」ではなく、段階を踏んで設計・実装・改善を繰り返すプロセスです。大きく三つのフェーズに分けて整理します。
① 自社の「採用における強み」を棚卸しする
最初にやるべきは、自社が持っている「採用上の強み」を洗い出すことです。既存社員へのインタビューから始めるのが最も確実な方法。
「なぜこの会社に入ったか」「入ってよかったことは何か」「予想と違ってよかったことは何か」——この三つの問いに答えてもらうだけで、採用ブランドの素材が出てきます。
注意すべきは、「経営陣が思う強み」と「社員が感じている強み」が異なることが多い点です。経営陣は事業の成長性やビジョンを語りがちですが、社員が挙げるのは「チームの雰囲気」「裁量の大きさ」「働き方の柔軟性」だったりします。求職者に刺さるのは後者のことが多い。棚卸しと並行して、「自社が採用したいターゲット像」を解像度高く定義することも必要です。
② ターゲットペルソナと、届けるべきメッセージを定める
ターゲットが定まったら、次は「そのターゲットに届けるべきメッセージ」の設計です。
メッセージ設計のポイントは、「伝えたいこと」より「求職者が知りたいこと」を起点にすること。自社のビジョンを語るだけでなく、「入社したらどんな仕事をするか」「どんな人がいるか」「どう成長できるか」というリアルな問いに答える内容を設計します。
メッセージはチャネルごとに表現を変えても構いません。ただし「芯」は変えないこと。採用サイトでは誠実に、SNSでは親しみやすく、説明会では熱量を持って——表現のトーンは変わっても、伝えている価値観は一致していることが、ブランドの一貫性です。
③ チャネルを選ぶ——採用サイト・SNS・動画、それぞれの役割
採用ブランドを伝えるチャネルは複数あります。それぞれの特性を理解した上で使い分けることが大切です。
採用サイト・採用LPは、すでに興味を持った求職者が訪れる場所。「認知」の役割よりも「理解を深め、応募に踏み切らせる」役割が大きい。具体的な社員ストーリーや仕事のリアルが重要です。
SNSは、平時からブランドを積み上げる場所。採用活動の有無に関わらず発信を続けることで、「いつか転職するときの選択肢」として記憶に残ります。
動画コンテンツは、文字・写真では伝わりにくい「空気感」を伝えられる唯一のチャネル。働く人の表情、職場の音、仕事の瞬間——求職者が「自分がここに合いそうかどうか」を直感的に判断するための情報です。
採用チャネルは「全部やる」より「ターゲットがいる場所に集中する」ほうが成果が出る。ターゲットが30代転職層なら、TikTokよりLinkedInかもしれない。
採用マーケティングと組み合わせてはじめて機能する

採用ブランディングは、それ単体で採用課題をすべて解決するわけではありません。マーケティングの施策と組み合わせることで、はじめて採用全体が機能し始めます。
ブランディングが土台、マーケティングが集客——この順番を逆にすると失敗する
採用ブランディングとマーケティングの関係で最も起きやすい失敗は、「ブランドが定まっていないのにマーケティングを先行させる」ことです。
スカウトメールを大量送信しても、企業ページに来た求職者が「何の会社かよくわからない」と感じれば離脱する。SNS広告を回しても、広告先のLPが整っていなければコンバージョンしない。マーケティングの効率は、ブランドの強度に大きく依存します。
IPA/WARCが発表した調査「The Long and the Short of It」でも、長期のブランド投資と短期の集客施策を組み合わせた企業が、どちらか一方だけを行う企業よりも高い効果を得ることが示されています(※5)。採用においても同じ構造です。
ブランドとマーケティングを「どちらが先か」という問いにしてしまうと、永遠に結論が出ません。「どう両立させるか」を設計することが本質です。
ショート動画採用が注目される本質的な理由
近年、採用文脈でショート動画が注目を集めています。「TikTokが流行っているから」という話ではなく、求職者の情報収集行動の変化への対応です。
求職者は、テキストの求人票だけでは「自分が合うかどうか」の判断ができなくなっています。動画で実際に働いている人を見ることで、「この人たちと働けそう」「この雰囲気は自分には向かないかも」という直感的な判断が生まれる。これが応募の質の向上につながります。
また、ショート動画は「一度作ったら資産になる」という特性があります。媒体掲載費は払った月にしか効果を生みませんが、動画コンテンツは積み上がります。採用ブランドを育てながらコスト構造を変えていく手法として、いま最も注目度が高い理由がここにあるのではないでしょうか(※6)。
リシンクでは2019年からショート動画事業を開始し、採用支援に特化したショート動画の制作・広告運用を行っています。【内部リンク:ショート動画制作】
採用動画と会社のブランドイメージが乖離している会社は多い。採用だけ急に「カジュアルでいい職場」を演出しようとしても、求職者はすぐ気づく。採用コンテンツはブランドの鏡です。
まとめ——採用ブランディングは「コスト」ではなく「資産」への投資
採用ブランディングに取り組むことは、短期的には数字に出にくい。採用サイトを整え、MVVを言語化し、SNSを継続発信しても、翌月の応募数がすぐ変わるわけではありません。
しかしその積み上げが「選ばれる理由」になります。採用ブランドが育った会社は、媒体に大きく依存しなくても人が集まる状態に近づく。そうなれば採用コストの構造そのものが変わります。
起点は経営者にあります。「何者か」を定義し、言語化し、採用の現場に自ら出ていく。それが土台になって、人事・マーケティングの施策が初めて機能し始めます。採用ブランドとマーケティングは対峙するものではなく、どちらが欠けても機能しない両輪。「ブランドを強くすること」と「集客の施策を動かすこと」を、同じ方向に向けて設計すること——それが採用課題に対する本質的な解答です。
採用ブランディングを含む採用支援については、株式会社リシンクへご相談ください。【内部リンク:お問い合わせ】
参照データ一覧
※1 株式会社マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250326_93514/
※2 Airbnb採用ページ・カルチャー紹介(公式サイト) https://careers.airbnb.com/
※3 メルカリ Culture Doc(公開資料) https://careers.mercari.com/jp/
※4 Tony Hsieh “Delivering Happiness” および Zappos Culture Book(社内外公開資料)に基づく
※5 IPA(Institute of Practitioners in Advertising)/ WARC 「The Long and the Short of It」by Les Binet & Peter Field(2013) https://ipa.co.uk/knowledge/publications-reports/the-long-and-the-short-of-it
追記として、マイナビの「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」[再掲] https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250326_93514/

採用情報
ブランドとマーケティングの二項対立を超えて、両方を高い次元で追い求めるには、既存の知見に安住せず、常に最善を問い続ける必要があります。つくるだけでも、売るだけでもない。美しさと論理のどちらも妥協しません。ブランドと成長の両方に向き合う仕事を、一緒にやりませんか?代表からすぐにご連絡を差し上げます。
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